ジョバンニ中島の それでも生きていこうか

うまく生きては来られなかった。馬鹿はやったけれど、ズルいことはしなかった。まだしばらくの間、残された時間がある。希望を抱けるような有様ではないが、それでも生きていこうか。

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

青みがかった暗がりの中、つくりものの星空が瞬いている。 「さわっていいよ」 女はくすりと笑って、並んで座った私の手を自分の太ももにのせた。効かせすぎの空調のせいで、タイトスカートからのびる素のままの肌はひんやりと冷たかった。 飲み屋の女の割に…

かげろう

S市の有名な繁華街の入り口に、くろだという焼き鳥屋がある。今の世のネット検索で調べてまともに出てくるのか、どうか。やってみたことはない。 愛想笑いのやりかただけは一応知っているというような大将と、黄ばんだこけしのような女将、そしておそらく少…

蜘蛛の糸

「いつになったら収まりますかね。この揺れ」 若い部下が青白い顔をして、俄かに冬に逆戻りしたようなどす黒い雲を見上げた。家族に電話が通じない、と呟いた。 私は生返事をしながら、ふわふわ波打つように感じる足元のアスファルトを見つめていた。平成23…

ミミズの夢

人生にはいろいろあるさ、うまくいく事ばかりじゃないと、それこそ数えきれないくらいの先人が言い遺して来ただろうし、もしこれを読んでくれている人がいるとするならば、そのあなたもそう感じたことが幾度かはあるのかもしれない。 でも、うまくいかない事…