癒える
人間というのは、強くない。
体や心の悲鳴を無視していると、必ずどこかに歪みが溜まる。程度が過ぎるとひどいことになる。
ある日突然、起き上がれなくなったことがある。
脊髄を駆け上る痺れに襲われ身動きが取れなくなったこともある。
人と会話を交わすことさえ耐えられなくなったこともある。
弾けてしまったゼンマイのようなもので、どうにもならない。
限界まで来たことが、自分自身にはわかっている。抗うのは止そう。これ以上無理を重ねることは、おそらく命に関わる。
社会への義理は、出来そうならば果たしておけばいい。まずは立ち止まることだ。時の流れから自分を引き剥がすことだ。安全な場所に身を横たえることだ。
見てみろ。そんなにたくさん、血が流れ出ているんじゃないか。
小難しい存在であることを、一旦やめよう。手足は折り畳んで、命を繋ぐものが通り抜けるだけの一本の管になろう。
時の流れを忘れて、無に埋もれることだ。
そうすることで、
誰のお陰でもなく、私はまた独り自ら癒える。
癒えて立ち上がり、またきっと歩き出す。